札幌ドーム移転と使用料&赤字の真相

◆ 日本ハム札幌ドーム移転問題

2003年8月に日本ハムは本拠地と事務所を札幌ドームに移転。そこから約20年間を日本ハムファイターズは札幌ドームをホームスタジアムとして使用するも、2023年より球団独自の本拠地スタジアムとしてエスコンフィールドを設立すると共に札幌市から北広島に移転。その経緯については以下の札幌ドーム移転問題年表の通り。

 

日本ハム札幌ドーム移転問題と使用料

日本ハム札幌ドーム移転問題と使用料

https://www.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/ballpark/detail/00130856.html

北広島市運営公式サイト(こちらもご参考ください)

 

上記のように北海道日本ハムは本拠地を札幌ドームからエスコンフィールドHOKKAIDOに移転をすることになりました。ここでのポイントは人口197万人の政令指定都市の札幌市よりも人口57,000人の北広島市日本ハムファイターズが選んだという事。

野球においては集客を理由に大都市を本拠地にすることが多く他のプロ野球11球団と比べても天と地の差があります。

 

プロ野球12球団別本拠地人口ランキング

プロ野球12球団別本拠地人口ランキング

 

それでも日ハムは札幌ドームから移転をして建設費600億円をかけてまで北広島を選んだのには日ハムの球団予算の困窮問題が成績にも大きく影響してしまっていたからなのです。

 

北広島市 本気の誘致活動】

北広島市は公園敷地36haのうち20ha分の土地を無償貸与、10年間の固定資産税と都市計画税の免除。市の負担でJRの新駅を設立など、北広島市の熱い熱意と支援が大きな決め手となりました。

 

その後、北広島市にもたらす経済効果は年間523億円に上るとの試算。駅前は再開発が進み土地の値段があがると共に雇用も増え、若い世代の人口流入も見込まれる。2028年4月開校を目指して北海道医療大学も移転を決めている。

 

【札幌市の厳しい現実】

・単純に日ハムが支払っていた球場使用料やイベント関連の売り上げ収益として約20億がそのまま入らなくなり、その代わりのイベント招致も進まず、結果として約10億かけて作った暗幕で仕切ることで2万人程度のイベント対応を図るも利用はほとんどなくこれも現状では更なる赤字に。

 

命名権を募集するも入札はなし。札幌ドーム内の広告は減少しており特に野球中継で注目されるフェンス広告は明らかにスペースが埋まっておらず。これも更に赤字拡大

 

・また日ハム戦がなくなったことで利用していた東豊線は約2億円の減収で札幌ドーム周辺施設の売り上げにも影響が出ているとのこと。

 

それだけプロ野球の影響力というのは大きく、現在では日本ハムファイターズが北海道には欠かすことのできない人気球団になったということでしょう。

 

 

◆ 日ハムが札幌ドームに負担していた金額

 

上述のように日ハムは札幌ドームに使用料の減額や札幌ドーム内でのイベント関連の売り上げを球団にも入るように提案しましたが、受け入れてもらうことが出来ず、逆に値上げを要求されていたとの報道も多く出ています。

 

また千葉ロッテマリーンズのように千葉市に対して指定管理者制度になることによって球場使用料の減額を提案するもこれも却下されたとのこと。

 

実際にどれくらいの使用料が札幌ドームに支払われていてどのような負担があったかというと・・・

 

① 球場使用料が約9億円

② その関連費用が約17億5,000万円

 

※ 野球専用ではないのでドームで野球以外のイベントが開催されるために、一部の客席や球場内のトレーニング器具の設置や撤去も全て球団負担。

 

つまり・・・26億5000万円ということは日ハムの総年俸とほぼ同じで、練習をするだけでも費用と時間と労力がかかるということ。

 

また札幌ドームはサッカーも並行して行うため、芝生の入れ替えが行われる。その芝生も他球場と比べると野球をするにあたり決してよい環境ではなかったとのこと。プロ野球選手はケガとの戦いでもあるので、当然このような環境も重要なことなのです。

 

 

ソフトバンクの例】

・福岡PAYPAYドームは2012年に約860億でソフトバンクGが買収することで年間約50億円程度のドーム使用料の発生がなくなり、野球専用スタジアムなので練習環境もしっかり整っている。(たまにコンサートなどで貸し出しもあるが基本は野球優先)

 

命名権も購入しているのは同じソフトバンクGの企業であり、毎年の使用料が実質0円で練習にも打ち込めて、球場内の広告や飲食、イベント企画なども自由に行えることで集客アップにもつながるなど札幌ドームとは真逆の環境で、選手の年俸も高くFAで選手も多く獲得できている。

 

千葉ロッテマリーンズの例】

指定管理者制度を最初に活用したのが千葉ロッテマリーンズ。当初は球場使用料を支払っていたが、2006年に球団が指定管理者になったことで球場の使用権だけでなく施設維持管理・受付・貸出業務・公演なども含めた契約が可能に。

 

・球場内での飲食、物販、広告看板の販売など球団側がより自由なビジネスができるようになり、経営状況は大幅に改善された。実際に千葉ロッテの試合は若い世代が多く、球場内外は野球の試合以外でも盛り上がっている。

(日ハムは札幌市にこの提案も却下されている)

 

 

◆ 日ハムは低予算で仕方なく選手を放出

 

以下のグラフを見ると日ハムの総年俸が12球団で最低なのがわかります。確かに優勝した翌日は年俸が全体的に上がる傾向がありますが、日ハムの総年俸23億円はかなり低い水準になります。

 

@Deltagraphs(Xより)

 

プロ野球にはFA移籍といって一定期間1軍に在籍すると自由に移籍交渉が出来る制度があり、このFA移籍時に選手は希望するチームに行くことが出来ます。その移籍を決めるには昔からファンのチームに行きたいとか優勝したいとかもありますが、1番は給料アップです。

 


球団側は当然必要な戦力なので、選手がFA制度を取得すると残留交渉として他チームに負けない金額アップを提示します。

 


ところが・・・日ハムは基本的にFAを取得するとほとんどが移籍していきます。

 

©中日新聞

 

もちろん出場機会を求めてということもありますが、札幌ドーム時代の日ハムは選手の残留を求めていても、やはり札幌ドームへの使用料が大きく他球団以上の高額年俸を出すことができなかったのです。

 

またポスティングという球団に移籍金が入る形でメジャーに行くことを承認することも特徴的で実際に以下の選手が日ハムに多額の移籍金を残してメジャーに行っています。これは球団も選手もWINWINですが、FA移籍よりも在籍期間が短いのでやはり戦力ダウンに繋がってしまうのです。

 

【ポスティング例】

ダルビッシュ(約40億円)

大谷翔平  (約22億円)

有原航平  (約1.5億円)

 

 

 

◆ エスコン移転で変わった日ハムの選手予算

 

2023年以降の日ハムは選手の残留や獲得に積極的になります。

 

結果として近藤健介はソフトバンクにFA流出してしまいますが、これは本人が他のチームに行きたかったこと&提示額が凄すぎただけに仕方がありませんが、それでも日ハムは今まで、他の球団を意識することはなく、最初の条件を釣り上げることはしない方針でしたが、近藤には条件見直しを提示。

 

FA取得の加藤貴之には北海道移転後では最高条件の4年12億円。

 

FA獲得で伏見には3年総額3億円(旧4500万円)

 

FA獲得で山崎福也には4年総額8~10億円(旧6000万)

 

今年はメジャーから復帰のバーヘイゲンに3.5億。マーフィー&ロドリゲスにも1.1億円。松本剛も伊藤大海も1億円を超えているので活躍すれば年俸もあがるので選手のモチベーションも上がるでしょう。

 

やはりチームを強くするにはある程度の予算はかける必要があり、今回の札幌ドームからエスコンへの移転はファンにとって非常にワクワクするものになったのではないでしょうか。

 

 

 

追記① 札幌ドームの2024年3月決算は6億5100万円の赤字

・2022年6月の札幌市の見通しは2024年には900万円の黒字だった。

・その後2024年は2億9400万円の赤字と大きく下方修正

・2024年6月19日には赤字は5億円超えと報道

・実際は6億5000万円の赤字

・札幌ドームの社長が「プロ野球をやらせてくれない」発言で日ハム以外の野球ファンまで巻き込んでSNSで炎上

 

 

追記② どうして札幌市の見通しはこんなに甘かったのか

ネーミングライツ問題

・運営形態による経営陣の怠慢

 

 

追記③ 札幌市が公表していない6億以上の損失の実態と大きな落とし穴

 

 

追記④ 札幌ドームは解体できない!?黒字に持っていく方法

 

 

以下については少し野球とは異なってくること&記事内容が大変長くなってしまいますので有料記事としてより専門的に解説していきます。

(以下については2024年6月23日に最新の情報を交えて加筆しております)

※ここまでの記事は主に2024年の札幌ドームの定時総会の開催前に書かれていた記事ですので、より詳しく最新のもので状況をご理解いただく参考にしてみてください。

 

札幌ドーム移転と使用料の真相|新城244

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